ドクターからの声doctor's voice

内視鏡検査を受ける前に
知っておきたい3つのポイント

医療法人社団 慈江会 住吉内科・消化器内科クリニック
院長 倉持 章 氏
医療法人社団 慈江会 住吉内科・消化器内科クリニック 院長 倉持 章 氏

内視鏡を受ける前というのは、どうしても憂鬱な気分になるものです。 患者さんが安心して内視鏡を受けるためには、検査を担当する医師の技術はもちろんのこと、医師をサポートする看護師やスタッフの腕や経験も重要です。 言ってみれば、その施設の「総合力」が求められる手技なのです。

内視鏡は患者さんにとってやや負担のかかる検査に分類されますので、「無痛・もしくは全く苦しくない」というのはありえません。 ただ、コツを知っておくだけで、その苦痛を最小限にできます。

苦しくない内視鏡を受けるには、
 1. 症例数の多い病院で
 2. 上手な医師に
 3. 自分に合った経路で
やってもらうのがコツです。

では、そのポイントを詳しく説明していきましょう。

1. 症例数の多い病院で
医師の検査数だけでなく、スタッフの検査経験数も重要な指標となります。 検査室には複数の看護師やスタッフがいます。主な仕事はスコープの洗浄や検査の介助ですが、患者さんに適切なタイミングで声掛けをしたり、背中をさすったりするのも大事な役割です。 検査はチーム医療ですので、スタッフの熟達度も検査の成否に大きく関わってきます。 よって、私見になりますが、年間の検査数が500件ほどに達するのであれば、検査経験が豊富といえますので、被検者はより安心できるのではないかと思います。

2. 上手な医師に
どうしても検査が上手な医師、そうでもない医師が存在します。中には、内視鏡初心者の研修医・レジデントの中にも、検査中の所作がとても優雅で、ムダのない動きをする天才的な医師というのがまれに存在します。 彼らは初めから内視鏡の才能があるのです。まさに「栴檀は双葉より芳し」といったところでしょうか。 患者さんが事前にそれを知ることは難しいでしょうから、やはり医師の症例数が一定の目安になります。

3. 自分に合った経路で
内視鏡の経路は「鼻から」「口から」のどちらかになります。鎮静剤使用の有無も考えると「口から、鎮静なし」・「口から、鎮静あり」・「鼻から、鎮静なし」・「鼻から、鎮静あり」の4通りが考えられますが、最後に挙げた「鼻から、鎮静あり」は、鼻からやるメリットが消えてしまうので現在、ほとんどの病院で行われておりません。 なので、選択肢は3通りとなります。

一般的に苦痛が多い順に
「口から、鎮静なし」>「口から、鎮静あり」≒「鼻から、鎮静なし」
と言われています。皆さんは、当然、「なるべく苦痛の少ない内視鏡」を希望されるでしょうから、2択ということになります。

「口から、鎮静あり」は悪くはない方法です。 鎮静剤のおかげで、検査中に苦しかったことを覚えていない、というのが最大の魅力です。 一方、病院での滞在時間が長くなる、当日は自動車・自転車の運転ができない、などのデメリットも存在します。 時には呼吸抑制やふらつき転倒など重い副作用や事故が起こることもあります。

このように鎮静剤使用後のわずらわしさのことも考えると、内視鏡を受けるのが初めての患者さんには「まずは鼻からトライしてみましょう」となってきます。

「鼻から」のメリットは、解剖学的にスコープが舌根(舌の奥の方、指で押すとオエッとなるところ)に触れないので、嘔吐反射(オエッとなること)が起きにくいことです。 また検査時間は5分程度ですし、検査後の生活制限もありません。かつて「鼻からの内視鏡は細いので、画質が悪い・解像度が劣る」と言われましたが、超高性能のカメラセンサーが開発され、その問題は解決されたように思います。

「鼻から」の唯一の欠点は、「鼻腔が狭くて通らない人がいる」ことです。 こればかりは、実際にやってみないとわかりません。検査直前に、両鼻腔内に表面麻酔を噴霧し、両鼻の入りやすい方からスコープを挿入します。 現在、鼻からの内視鏡の直径は5.8mm~5.9mmといったところですから、これより鼻腔が狭いと「鼻からは入らない」ということになります。

4. おわりに
「内視鏡を受ける前に知っておきたい3つのポイント」について説明してきました。 現在は、インターネットなどの発展に伴い、医療についての情報も比較的簡単に手に入る時代です。むしろ、情報が多すぎて混乱することも多いかと思います。 あふれる情報を正しく取捨選択し、なるべく負担の少ない有益な内視鏡を受けてください。